千葉県佐倉市 わたなべ司法書士事務所 司法書士 渡辺健治 です。
最近は、弁護士事務所や司法書士事務所のテレビコマーシャルや電車の中吊り広告を見かけることが少なくなりましたが、問い合わせをいただくことがありますので、過払金について、少し触れたいと思います。
テレビコマーシャルで「払いすぎた利息は取り戻すことができます」と聞いたことがあると思います。そこで、なぜ利息を払いすぎるのだろう? なぜ払う必要のない利息を貸金業者が請求していたのだろう? と疑問に思ったことはありませんか。
利息は、貸主と借主の契約で決まるものですが、あまりにも高い利息を取ることは問題であり、一定の制限が必要との考えから、「利息制限法」で利息の上限が決められています。
・元金が10万円未満の場合・・・・・・・・・・年20%
・元金が10万円以上100万円未満の場合・・・年18%
・元金が100万円以上の場合・・・・・・・・・年15%
上限を超える利息の契約をした場合、超過部分は無効となります。
また、「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」でも利息に関する決まりがあり、平成12年6月1日から平成22年6月17日までは、金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合に、年29.2%を超える利息の契約をしたときは、刑罰が科せられることになっていました。
そこで、貸金業者は、民事上は無効だけれども、刑罰の対象とならない利息(15%~20%超29.2%以下)でお金を貸していたのです(当時、「貸金業の規制等に関する法律」で一定の要件を満たすと、利息制限法の上限を超える利息を支払ったとしても、有効な利息債務の弁済とみなされる特例が定められていたこともあってのことです。しかし、この特例が適用される要件の充足は難しいものでした)。この「民事上は無効だけれども、刑罰の対象とならない利息」は「グレーゾーン金利」と呼ばれています。
グレーゾーン金利と言っても、民事上は無効ですから、たとえば、50万円を年29.2%で借りて1年後に返済する契約の場合、法律上の利息(年18%)は、90,000円となります。ところが、貸金業者から請求される利息(年29.2%)は、146,000円です。この差額56,000円を払いすぎていたことになります。これが、過払金と言われるもので、貸金業者に返還を求めることができます。
ここで、注意していただきたいことがあります。「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」の改正により、平成22年6月18日以降は、年20%を超える利息の契約をしたときは、刑罰が科せられることになったのと、「貸金業の規制等に関する法律」に代わる貸金業法が完全施行されたことにより、貸金業者は、グレーゾーン金利で貸し出すことができなくなり、「利息制限法」が定める利息の範囲内で商売することになったのです。
したがって、平成22年6月18日以降に貸金業者と取引を始めた方に、過払金は発生しません。また、平成22年6月17日以前から貸金業者と取引があっても、取引が終わってから10年以上経過している場合、仮に過払金が発生していたとしても、返してもらうことはほぼ不可能です(消滅時効)。結局、過払金を返還してもらえる可能性があるのは、平成22年6月17日以前から貸金業者と取引があって、現在でも取引が継続しているか、取引が終わってから10年経過していない方に限られます。
以上、過払金に関して一般的に言えることを書きましたが、実際に過払金があるのか、返還してもらえるのかは、個別事案により変わります。気になる方は、ご相談ください。 なお、カードショッピングの利用で過払金が発生することはありません。